仙台市の民家で本の貸し出しや読み聞かせなどをしてきた家庭文庫「のぞみ文庫」が昨年、半世紀を超える歴史に幕を閉じた。主宰者の思いと蔵書の一部を宮城県石巻市の元教員らが受け継ぎ、今年5月、旧北上川に臨む交流施設で地域文庫「川べの文庫」を始めた。赤ちゃんからお年寄りまで集う「本を通した居場所づくり」を目指す。
のぞみ文庫は仙台市太白区向山の川端英子(ひでこ)さん(89)が自宅を開放し「本のある子どものたまり場」として1970年から54年続けたが、高齢になり、活動を終えた。蔵書の一部は地元の向山コミュニティ・センターに引き継がれ、昨年12月から地域文庫に生まれ変わった。のぞみ文庫の名は継承された。
川端さん宅には多くの蔵書があり、引き継ぎ先を探していた。石巻市の元小学校教員で学校司書の経験もある阿部理恵さん(67)は、仙台市の友人の紹介で昨年12月に川端さん宅を訪ね、蔵書の一部を分けてもらった。
隈研吾氏手掛けた交流館
阿部さんの散歩コースになっている旧北上川に臨む堤防に、誰でも利用できる「北上川・運河交流館」(石巻市水押3丁目)がある。管理する市に相談したところ、本を置くことが認められた。
交流館は建築家の隈研吾氏が手掛けた。環境との調和を目的として「北上川の土手に埋蔵されたミュージアム」をイメージしたという斬新な建物で「水の洞窟」とも呼ばれている。
悠々と流れる旧北上川に臨む絶好のロケーション。地域文庫は「川べの文庫」と名づけて、5月11日にオープンした。交流スペースなどに本棚を置いて「のぞみ文庫」から譲渡された絵本や児童書350冊に加えて、石巻市内の元幼稚園の蔵書「栄光ファミリー文庫」、個人からの寄贈本など計1千冊を用意した。
当初は子ども向けの本だけの…